ナトリウムとカリウムの摂取バランスを考慮した食事で尿ナトリウム/カリウム比の改善を確認

カゴメ株式会社(代表取締役社長:山口聡、本社:愛知県名古屋市、以下、カゴメ)と学校法人香川栄養学園 女子栄養大学(学長:香川 明夫、所在地:埼玉県坂戸市、以下、女子栄養大学)は共同で、健常な方を対象に、野菜等によりカリウムを増やした食事「増カリウム食」の摂取が尿ナトリウム/カリウム比(Na/K比)に及ぼす影響を検討しました。その結果、増カリウム食の摂取により尿Na/K比(※)の改善(低下)が認められました。本研究内容は、202312月発行の日本栄養・食糧学会誌第766号に掲載されました。

(※)尿Na/K比はナトリウム(食塩)とカリウム(野菜や果物)の摂取状況を表す指標です。尿Na/K比と血圧に正の関連があることが報告されていることから、高血圧予防においてこの指標を活用した食事指導への期待が高まっています。

 

■ 本研究の目的

日本人の食塩摂取目標量は男性7.5 g/日、女性6.5 g/日ですが(*1)、現状の摂取量は約10 g/日と報告されています(*2)。高血圧予防には減塩が重要ですが、食味等の観点から減塩を実践・継続するのが難しい場合もあります。減塩が難しい時は、カリウムの多い食事を取り入れ、ナトリウムとカリウムの摂取バランスを整えることが血圧管理に有効となりうるかについて、血圧との関連が報告されている尿Na/K比を指標に評価・検証しました。

 

■ 試験方法

① 実施方法
18~29歳の健常女性43人を対照食群、減塩食群、増カリウム食群の3群に分け、各群、指定の試験食13食+間食を2週間摂取してもらいました。摂取期間前後には24時間蓄尿を実施し、尿Na/K比を測定しました。

② 試験群と試験食
 各試験食の設計意図は下記の通りです。実際に供した試験食の栄養素量は表1に示しました。なお、各試験食に対し1週間分(1日3食+間食を7日分)の献立を作成し、その2週間分の食事を研究対象者に提供し、摂取していただきました。

〈対照食群〉
目標量に向け約50%減塩(約8.5 g/日)し、カリウム量を20代女性の平均摂取量に設定した食事(対照食)。

〈減塩食群〉
目標量を満たすよう減塩(約6.5 g/日)し、カリウム量を20代女性の平均摂取量に設定した食事(減塩食)。対照食の献立の一部に対し調味料の減量、減塩食品による代替等を実施した。

〈増カリウム食群〉
対照食を基に、ナトリウム量と同程度までカリウムを増やした(※)食事(増カリウム食)。対照食の献立の一部に対し野菜や豆類の追加、カリウム量の多い食品による代替等を実施した。

(※)日本人の食事摂取基準(2020年版)を参考にすると、食塩摂取目標量に相当するナトリウム量とカリウムの摂取目標量はおよそ同量となります(成人男性で約3,000 mg/日、成人女性で約2,600 mg/日)。また、近年の学術論文(*3, 4)により提案されている尿Na/K比の目標値(物質量比で0)を達成するためには、理論上ナトリウムと同等かそれ以上(質量として)のカリウムを食事から摂取する必要があります。

表1 試験食中のナトリウム量、食塩相当量、カリウム量
71-1

■ 試験結果

1の通り、増カリウム食群は摂取期間前に比べ摂取期間後で尿Na/K比が有意に低下しました(解析対象者全員の場合;2.9±1.22.0±0.6p = 0.01)。摂取期間前の尿Na/K比が2以上の者の場合、増カリウム食摂取による尿Na/K比の低下効果はさらに顕著でした。また、減塩食群においても尿Na/K比の低下傾向(p < 0.1)が認められました。次に、尿Na/K比の変化量を群間で比較しました。解析対象全員について解析したところ有意な差は認められませんでしたが、摂取期間前の尿Na/K比が2以上の者に絞って同様に解析したところ、増カリウム食群の尿Na/K比の低下量が対照食群と比べて有意に大きいことを確認しました(図2)。

71-2対照食群n=15、減塩食群n=14、増カリウム食群n=14 平均±標準偏差、対応のあるt検定(摂取期間前vs後)
1 各群内の摂取期間前後の尿Na/K比の比較(解析対象者全員)

71-3
対照食群n=13、減塩食群n=11、増カリウム食群n=10
             平均±標準偏差、一元配置分散分析およびボンフェローニ法
2 尿Na/K比変化量の群間比較(摂取期間前の尿Na/K2の者のみ)

■ まとめ

減塩が難しい時にその分カリウムを増やした食事を摂取することが尿Na/K比の改善に有用であることが示唆されました。本研究結果から、血圧管理のために尿Na/K比を指標に食事指導や献立設計を行う際、食味等の観点から減塩を実践・継続するのが難しい場合に、緩やかな減塩とカリウム摂取量の増加を組み合わせた食事も選択肢となり得ると考えられます。献立の幅が広がることで、尿Na/K比ひいては血圧の管理に向けた食行動変容を促進することに貢献できると期待しています。

なお、カリウム摂取の増加と尿Na/K比との関係を調べることに焦点を当てるという目的から、上記のように結果をまとめましたが、尿Na/K比の改善ひいては高血圧予防の食事として第一に重要なことは「減塩」です。減塩を基本にしながらも野菜等からカリウム摂取を増やすことに本研究から得られた知見が貢献することを希望いたします。

 

■ 掲載論文情報

清水友紀子、山中沙紀、牛田悠介、菅沼大行、佐藤郁夫、石田裕美、「カリウム量をナトリウム量と同程度まで増やした食事の摂取が尿ナトリウム/カリウム比に及ぼす影響」、日本栄養・食糧学会誌 第76 6 2023

 

■ 参考文献

*1)厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版).
   https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

*2)厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査報告.  
    https://www.mhlw.go.jp/content/001066903.pdf

*3Kogure M, Nakamura T, Tsuchiya N, et al. Consideration of the reference value and number of measurements of the urinary sodium-to-potassium ratio based on the prevalence of untreated home hypertension: TMM Cohort Study. Hypertens Res. 2022;45(5):866-875.

*4Salman E, Kadota A, Okami Y, et al. Investigation of the urinary sodium-to-potassium ratio target level based on the recommended dietary intake goals for the Japanese population: The INTERMAP Japan. Hypertens Res. 2022;45(12):1850-1860.

 

(本件のお問い合わせ先)

学校法人香川栄養学園 女子栄養大学 広報部 学園広報課
TEL:03-3915-3668 E-mailgkoho@eiyo.ac.jp

カゴメ株式会社 経営企画室 広報グループ 北川、堀江 TEL03-5623-8503

 

 

ニュース一覧へ戻る

ニューストピックス

こちらのニュースもおすすめ

すべて見る

お問い合わせ

まずはお気軽にお問い合わせください。

すぐに使えるお役立ち情報

資料ダウンロード