カゴメ株式会社(代表取締役社長:奥谷晴信 本社:愛知県名古屋市)と弘前大学(学長:福田眞作)は、臨床検査機器・試薬を開発・製造・販売しているシスメックス株式会社(代表取締役社長:松井石根 本社:兵庫県神戸市)との共同研究において、弘前大学COI-NEXT拠点(*1)が有する岩木健康増進プロジェクト(*2)の健康ビッグデータを活用し、推定野菜摂取量測定器「ベジチェック®」(*3)で測定される皮膚カロテノイド(*4)と、アルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関係を解析しました。その結果、60歳未満の健診参加者において、皮膚カロテノイドレベルが高い群では、アルツハイマー病に関連する血液指標である血中アミロイドβ42/40(*5)が良好であることが示されました。本研究成果は、2026年10月1日に国際学術雑誌である「Scientific Reports」に掲載されました。
■ 発表のポイント・ 岩木健康増進プロジェクト健診で得られた健康ビッグデータを用い、皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関連を解析しました。
・ 60歳未満の成人において、ベジチェック®で測定された皮膚カロテノイドレベルが高い群では、全自動免疫測定装置で測定された血中アミロイドβ42/40が良好であることが示されました。
・ 血中アミロイドβ42/40は、アルツハイマー病の症状が現れる前から変化する早期血液指標と考えられています。本研究は、日常の食生活を反映する皮膚カロテノイドレベルが、比較的若い世代からこの指標と関係している可能性を示すものであり、食生活と将来の認知症との関係を解明するための新たな手がかりになることが期待されます。
■ 研究の背景超高齢化社会において、認知症は個人だけでなく社会全体で取り組むべき喫緊の課題です。アルツハイマー病は認知症の主要な原因の一つであり、早期診断や適切な介入が重要とされています。アルツハイマー病に関連する脳内病理の評価には、アミロイドPET検査(*6)や脳脊髄液検査(*7)などが用いられていますが、検査へのアクセス、身体的負担・費用などの課題があります。そのため近年、より負担の少ない血液バイオマーカーへの注目が高まっています。
アルツハイマー型認知症は発症の数十年前からアミロイドβやタウといった物質が脳内に蓄積され、それに伴う変化が血液中にも反映されることが分かってきています。そこで近年、血液中のアミロイドβやタウなどを測定することで、アルツハイマー病に関連する脳内病理を低侵襲に評価するための研究開発が進んでいます。中でも血中アミロイドβ42/40は、最も早くから変化する血液指標の1つであると考えられています。
一方、野菜に多く含まれるカロテノイドは抗酸化機能を有し、認知症の予防に繋がることがこれまでの研究で示唆されています。しかし、自身の野菜摂取量や体内のカロテノイド量を正確に把握することは容易ではありません。ベジチェック®は、手のひらを専用の機器に約30秒程度かざすだけで皮膚カロテノイドレベルを推定できる機器であり、日頃の野菜摂取状況を簡便に把握することができます。
皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関係を明らかにすることは、食習慣とアルツハイマー病関連病理との関係を理解するための基礎的知見になると考えられます。今後、長期的な追跡研究などを通じて両者の関係をさらに検証することにより、将来の認知症予防に役立つ知見につながることが期待されます。
■ 研究方法2024年岩木健康増進プロジェクト健診の参加者770名を解析対象としました。生体内のカロテノイド量は、皮膚カロテノイドレベルを測定できる「ベジチェック®」を用いて評価しました。アルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーは、血中アミロイドβ42/40をはじめとする5つの指標を用いて評価しました。
皮膚カロテノイドレベルは四分位に分類したうえで、年齢、性別、教育歴、喫煙・飲酒歴、社会的・精神的健康度などの要因で調整し、アルツハイマー病に関連する各指標との関連を重回帰分析によって解析しました。ただし、加齢に応じてアルツハイマー病理指標の進行が加速することを考慮し、60歳未満とそれ以上に分けて解析しました。
■ 研究の結果解析対象者の平均年齢は50.0歳であり、60歳未満の集団に絞ると43.8歳でした。
皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する各指標との関連を解析した結果、60歳未満の集団においては、皮膚カロテノイドレベルの低値群(第1四分位、中央値4.4)と比較し、高値群(第4四分位、中央値6.8)では、血中アミロイドβ42/40が統計学的に有意に良好であることが明らかとなりました。
年齢と血中アミロイドβ42/40との関連を皮膚カロテノイドレベル別で可視化した結果、皮膚カロテノイドレベルの高値群と低値群の間には、年齢に伴う約4.5~7年分の変化に相当する差が認められました。
図1 皮膚カロテノイドレベル別 年齢と血中アミロイドβ42/40との関連
血中アミロイドβ42/40は、高値であるほど良好。
網掛けは95%信頼区間。
■ 掲載論文情報
論文名: Skin carotenoid levels are associated with blood amyloid-beta 42/40 ratios in healthy individuals under 60 years of age
掲載誌: Scientific Reports
著者: Toshitaka Yamauchi, Naoko Waki, Shigenori Suzuki, Shun Murakami, Kengo Ishiki, Kazuto Yamashita, Masahiro Miura, Jun Sato, Toshiyuki Sato, Tatsuya Mikami, Koichi Murashita, Shigeyuki Nakaji, Yoshinori Tamada, Ken Itoh
DOI: 10.1038/s41598-026-69139-5