前回から掲載が始まった、健康経営の第一人者である平井孝幸さんへのインタビュー。全3回中2回目となります。
第二弾のテーマは、『健康経営を上手に進める秘訣』。
前回は、健康経営で目指すパフォーマンス向上についてお話をいただきました。多くの人が関心のありそうなパフォーマンス向上ですが、なかなか健康経営が社内に広まらない、といったお声もよく伺います。
そこで、今回も本コラムにて私自身がインタビュアーとなり、素敵なお話が引き出せるよう、張り切ってまいります!
プロフィール:平井孝幸さん
株式会社イブキ代表取締役
慶應義塾大学卒業後、ゴルフ事業で起業。2011年にDeNAに入社。15年から、働く人のパフォーマンスアップやウェルビーイングをテーマに健康経営を開始。19年、20年に経済産業省と東京証券取引所から評価され、健康経営銘柄を獲得。近著に「仕事で成果を出し続ける人が最高のコンディションを毎日維持するためにしていること」
健康経営をうまく進める秘訣は、「健康」を謳わないこと?
―こんにちは!今日を楽しみにしておりました!
まず、前回少しお話しいただいていた、うまく健康経営を進めるコツを教えてください。
一言で言うと、「健康」という言葉を使わないことです。
―健康経営施策なのに、「健康」という言葉を使わないのですか!それはなぜでしょう?
まず皆さま自身で思い浮かべてみていただきたいのが、健康増進を目的にした行動をとったことはありますか?ということです。
一度病気を経験した人や、私のように個人的にスポーツや職業などで健康や体調に関して関心の高い人は、健康でいたいという思いや、健康への興味がきっかけで行動することがあるかもしれません。
ただ、特に20~30代のうちから、将来長生きしたいから不摂生をしない、可能な限り食事や運動に気を付けて健康的な生活習慣を続ける、と意識している人は少ないのではないでしょうか。
先日お話ししたDeNA社※での事例もそうでしたが、私がさまざまな施策を実施する中でわかってきたことは、
「健康を目的にした行動にはほどんどの人が関心を示さない」、ということでした。
※平均年齢34歳
―確かにそうですね。具体的に健康という言葉を使わず施策を進めるとはどのようなイメージなのでしょうか?
そうですね...例えば、野菜摂取量を増やしたい場合、野菜は健康によい、と伝えることが多いのではないでしょうか?
私はまず、野菜=健康ではなく、野菜=おいしいでアプローチすること、おいしい野菜を食べてみたいと皆が自然と興味を持つ流れを
作っていくことが大切ではないかと考えています。
この考えは4年ほど前、すぐきという京都の漬物に関して調べたことがもととなっています。
すぐきから発見された植物性乳酸菌“ラブレ菌”の摂取は、インフルエンザに感染するリスクを低減できる可能性があることほか、
さまざまな効果効能がわかっていますが、当時多くの人がすぐきを購入する理由は「おいしいから」。
おいしいものを食べたい、という欲求は多くの方にあるかと思います。そこにしっかりアプローチすることは人を動かす大きな力になりますね。
そのほかにも街には人を動かす仕掛けがたくさんあります。楽しい、面白い、おいしい...行動変容を促すスイッチをぜひ観察してみてください。
もちろん健康に関心を持ってもらい、そのために行動してもらう形も素晴らしいと思います。それとあわせて、楽しんで自然と行動に移してもらうために切り口を変えることも、今まで巻き込めなかった層を引き入れる大きなきっかけになるのではないでしょうか。ぜひ試してみてほしいです。
―少し想像してみましたが、確かにスイッチは本能に訴えるものがよいかもしれないですね。
なお、行動を変えた後、それを継続してもらうことも難しいとお悩みいただくことがあります。
これに関してもほかの事柄と合わせて考えてみましょう。
例えばYoutubeへの動画アップを趣味で始めてみたとき、「面白いね」「次のアップはいつ?」と周りから反応があると、続けたいという意識が高まるのではないでしょうか?
健康行動に関しても同じで、都度フィードバックや褒めることで、「あなたが変わっていく様子が私にとっても幸せです」と伝えること、これが良い行動変容を定着してもらうためには重要であると考えます。
―なるほど。健康経営担当者の皆さまや私たち健康経営をサポートするサービス提供者にためになる情報盛りだくさんですね!
逆に従業員が気を付けることはあるのでしょうか?
会社から「健康になりましょう」と健康施策による働きかけがあったとき、健康には興味はない、と避けてしまうのではなく、ワークパフォーマンスが向上するかも、美容にもよいかも、と健康を関心ある領域に変換してみてほしい、ということでしょうか。
健康度の向上は全方位的にポジティブな影響を及ぼします。
ワークパフォーマンスを上げることで、仕事の効率はもちろん、仕事を早く終えた後の時間で趣味などのプライベートにもより力を割けるようになるかもしれません。
―カゴメ社内でも働き方改革は生き方改革、などと言われています。確かに、働く時間が人生に占める時間って意外と大きいですよね。
ちなみに、野菜果物とパフォーマンスに関しては、野菜果物の摂取頻度が少ない人は、多い人に比べて労働生産性が30%以上低くなる
リスクが122%という研究結果もあります。
セミナーにて、「食事は身近な自己投資」と話している講師もいるのですが、1日3回ある食事だからこそ、簡単にできることから自然と
習慣化していくことは、食を切り口に健康経営全体を上手に進めるひとつの策となるかもしれませんね。
―おわりに―
続きが気になりますね!第三弾はさらに具体的に、施策にフォーカスしたテーマとする予定です。ぜひ楽しみにお待ちください!
「Happy Wellness!」
・カゴメニュースリリース ラクトバチルス・ブレビス・KB290(通称:ラブレ菌)を含む飲料の継続摂取によるインフルエンザ罹患率の低減を確認
・RobroekSJ,vandenBergTI,PlatJF,etal.Theroleofobesityandlifestylebehavioursinaproductiveworkforce.